近年は生成AIや予測AIの発展が著しく、企業のさまざまな業務へAIツールの導入が進むようになりました。AIツールの導入後に、「業務の質が向上した」「業務が効率化された」と実感している企業が増加しています。
一方、AIツールを導入したものの「どう使ったらよいかわからない」「活用が定着しない」「意外と使いづらい」と感じている企業も少なくありません。
今回は、AIの導入を成果につなげるために必要な「AIツールの選び方」、「業界で評価されている企業向けAIプラットフォーム製品5つ」、「運用の注意点」を解説していきます。
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AIプラットフォームとは
AIプラットフォームとは:AIを利用した「顧客サービス」「業務システム」「アプリケーション」を開発できる環境のことです。
AIプラットフォームには、開発に必要なデータを学習・分析する機能や、UI作成機能が揃っている特徴があります。
主なAIプラットフォームの種類
AIプラットフォームには主に2つの種類があります。
総合型AIプラットフォーム
AIを活用した開発に必要な環境がすべて揃っているプラットフォームです。以下の特徴があります。
- PaaS(Platform as a Service)形式で提供されることが多い
- データ処理、機械学習、自然言語処理など、幅広いAI技術をカバーしている
- 活用には一定のITスキルや専属のエンジニアが必要
特化型AIプラットフォーム
特定の業界や業務に特化して設計されているプラットフォームです。以下の特徴があります。
- 医療分野の画像診断、小売・物流の在庫管理、金融・保険の自動与信審査など、特定のニーズに最適化されている
- ITスキルが必要なく活用できる
- カスタマイズ性に限界がある
今回取り上げる企業向けAIプラットフォームとは、総合型AIプラットフォームと特化型AIプラットフォームの中間に位置すると言えるでしょう。企業や法人が利用しやすいように幅広い開発環境を提供しつつ、高度なITスキルなしでも運用できるのが特徴です。
企業向けAIプラットフォーム導入のメリット
企業向けAIプラットフォームを導入するメリットについて見ていきましょう。
AI運用までの期間・コストを抑制
AIプラットフォームには、AIを活用した顧客サービス、業務システム、アプリケーションの開発に必要な環境が全て揃っています。そのため実際に運用するまでの期間を短くできますし、導入・開発期間のコストを削減できます。
ノーコード開発・運用が可能
ほとんどの企業向けAIプラットフォームはノーコードで利用できます。IT人材が不足している企業でも導入しやすくなっています。
スモールスタートが可能
多くの企業向けAIプラットフォームはクラウドサービスなため、拡張性に優れています。最初は小さなプロジェクトのために導入して、ツールに慣れ、効果を測定しながら、徐々にプロジェクトを拡大していくことが可能です。
人材不足・採用難に対応できる
AIプラットフォームは、人間がしている定型的な業務や、データ処理を代わりに行ってくれます。そのため人材不足が問題になっている現場の負担を和らげるのに最適です。採用難で社員を増やしにくい企業が成果を出すのにも役立ちます。
企業向けAIプラットフォームの失敗しない11の選び方
導入後に使いやすく、成果を実感しやすい製品を選ぶためには何に注目すべきでしょうか。
「導入の目的をはっきりさせる」「解決したい課題を選定する」といった基本をまず行うことが大切です。では、基本を押さえたあとに意識すべき11のポイントを紹介していきます。
1. ハルシネーション対策はできるか
AIがウソをつく、知ったかぶりをするといった「ハルシネーション」対策ができる製品を選びましょう。RAG技術を採用している製品を選ぶのがおすすめです。
RAGとは:LLMに加え、自社のデータベースにある製品情報も検索させ、精度の高い回答を生成させること
実は、RAGは運用が難しいという特徴があります。
自社にあるデータをAIに学習させ、望んだ回答を生成させるのは簡単ではありません。製品を選ぶ際には、RAGの運用を丁寧にサポートしてくれる製品を選ぶとよいでしょう。
2. LLMの切り替えは可能か
各種のLLMには得意分野があり、精度にばらつきがあります。そのためOpen AI GPT、Claude、AWS Bedrockなど複数のLLMを切り替えて使える製品がおすすめです。自社の運用にぴったりのLLMを見つけたり、使用する言語に応じてLLMを切り替えたりできるので、汎用性が高くなります。
さらにLLMの切り替えができる製品は、リスク管理が容易になります。仮に、大手AI企業が不祥事を起こしたとしても、すぐに別のLLMへ切り替えて運用を継続できます。
3. プライベートクラウドで運用できるか
企業がAIを活用するときに心配するのが「機密情報の漏洩」です。
情報管理を徹底するためAIプラットフォームを外部とつながっているパブリッククラウドではなく、プライベートクラウドで運用するニーズも一定層あります。導入する製品が、自社が運用するプライベートクラウドにインストールできるかどうかを確認しましょう。
4. FAQの自動生成が可能か
社内でのナレッジは分散しがちです。またマニュアル類は日々更新されていきます。そのため、ナレッジベースのアップデートは遅々として進まないという問題が発生します。そんなときFAQを自動生成してくれる製品は便利です。
注意したいのは、AIにより自動生成されたFAQを、人間がチェックし、編集できる製品かどうかをチェックすることです。
人間が簡単にレビューをすることができる製品(※)は、ハルシネーションの防止がしやすいのでおすすめです。
※ヒューマンインザループで設計されている製品
5. 外部の解析サイトへデータ送信の禁止ができるか
社内の情報を徹底管理するためにも、「外部の解析サイトへのデータ送信を禁止できる」機能があるかどうかを確認してください。問題が起きたり、調査が必要になったりした場合にのみ制限を解除するといった使い方ができる製品は便利です。
6. 導入だけでなく運用もサポートしてもらえるか
AIプラットフォームの使用を社内に定着させるためには、導入だけでなく運用のサポートが必須となります。そのため導入サポートだけでなく、運用サポートも提供している製品を選ぶようにしてください。
運用サポートがあると、「AIがうまくデータを学習してくれない」「追加された新機能をどう活用したらわからない」といった悩みを解消できます。
AIプラットフォームを導入したまま、「使いこなせないのでいつの間にかほったらかしになっている」といった事態を防げます。サポートがあることで、導入した製品のポテンシャルを最大限に引き出せます。
7. 紙データなどの構造化ができるか
「PDFをAIに読ませても、学習精度が悪い」「紙の資料をAIに学習させるのが大変」といった声が聞こえてくることがあります。
AIに学習させるデータの構造化には多くの企業が苦心しています。PDFなどの電子データに加え、紙データも構造化することをサポートしてくれる製品は使い勝手が良いです。
8. メンテナンスが簡単
カスタマイズ性が高いAIプラットフォームは、社内の情報システム部によるメンテナンス、管理、バグ対策が必要となります。製品を選ぶ際には、カスタマイズ性の高さを担保しつつ、面倒な管理が不要なものを選びましょう。
9. UIが使いやすいか
企業向けAIプラットフォームで多く利用される機能がチャットボット機能です。できるだけチャットボットのUIが見やすい製品がおすすめです。
ユーザーに好評価なUIには、「簡潔な回答」「詳細な回答」「参照元の資料」の3つが表示されている特徴があります。
10. API連携ができるか
API連携ができれば、既存のCRMなど様々なシステムとAIプラットフォームを連携させて運用できます。
もしAPI連携ができないと、「情報が分散したまま」「ナレッジがサイロ化したまま」の状態が変わらないので注意してください。
11. Microsoftオフィス文書の直接インポートが可能か
AIはいろいろな種類のデータを学習できます。テキスト、PDF、画像、動画などを学習していけます。
しかしAIプラットフォームによっては、Word, Excel, PowerPointといったMicrosoftオフィス文書を直接インポートできないことがありますので気をつけましょう。
企業向けAIプラットフォーム比較5選
企業向けAIプラットフォームの数ある製品の中から、評判の良い製品を5つ紹介していきます。製品ごとに以下のポイントを比較していくので参考にしてください。
- 特徴
- 機能
- こんな企業におすすめ
- 製品サイト
- 製品の動画
1. GIDR.ai(ガイダー.エーアイ)
GIDR.aiとは、米国GIDR(ガイダ―社)が弊社とともに共同開発している企業向けAIプラットフォームです。日本企業のさまざまな声を元に機能が続々と追加されています。
GIDR.aiを活用することで、導入企業はAIプラットフォームを自在にカスタマイズし、使い勝手の良いAIエコシステムを社内に作れます。
海外の最新ソフトウェアを国内市場へローカライズしてきた18年の実績がある弊社がサポートするので、安心して運用していただけます。
■特徴
- 主要なLLMに加え、ローカルLLMを切り替えながら運用できる
- 一つの企業の中で、部署ごとに異なった「AIサービス」「AIシステム」「AIアプリ」を構築できる
- 「データソースの登録」「チューニング」「AIチャットボット」など、すぐに利用できる簡単モジュールが搭載されている
- PaaSのため最新AI技術が利用できる
■機能
- すべてがマイクロサービス、すべてがAPI化されており、コンポーネントとして利用可能
- RAG搭載+運用サポート
- 機密情報へのマスキング機能あり
■こんな企業におすすめ
- 生成AIを自社ニーズにぴったり合わせた形で、安全に活用したい
- 一つの製品だけで、社内のAI化を一気に進めたい
- 機密情報を含むデータを扱いたい
- 生成AIのリスク (ハルシネーションや情報漏洩)をコントロールした活用を実現したい
- 活用したいデータの量と種類が多くて途方に暮れている
■製品サイト
https://gidr-ai.cba-japan.com/
■製品の動画
2. PKSHA Communication Cloud
PKSHA Communication Cloudは、カスタマーサポート向けオールインワンAI SaaSです。Webからの問い合わせ対応や、コンタクトセンター業務といったカスタマーサポートの分野が得意な製品です。
■特徴
- AIを用いたチャットボット、FAQシステムの開発が容易
- 精度の高いAIによる回答
- 国内企業への多数の導入実績
■機能
- 日本語の回答精度が高いチャット型対話エンジンを搭載
- FAQには1,200万語の言語辞書を搭載した「言語理解エンジン」を搭載
- 日本語に特化した補正技術を採用したボイスボット機能
■こんな企業におすすめ
- Webサイト上での自己解決サービスが不十分
- 社内で必要な情報がまとめられてないから、顧客への返信に時間がかかる
- オペレーターが対応する呼量をもっと削減したい
■製品サイト
https://aisaas.pkshatech.com/communication-cloud/
■製品の動画
3. Dify
Difyとは、オープンソースのLLMアプリ開発プラットフォームです。RAGを使用し、LLMを組み込んだアプリケーションやAIエージェントを簡単に作成できます。
■特徴
- オープンソースのため、基本的な機能はすぐに無料で使える
- 豊富なテンプレートや拡張機能が提供されているため開発が容易
- ノーコードでAIアプリケーションを作成できる
■機能
- RAGを搭載
- カスタムAPIを使用したシームレスな統合
- 長さ制限なしのドキュメント生成
■こんな企業におすすめ
- まずは無料でAIアプリケーションを開発したい
- 複数のLLMを切り替えながら運用したい
- 手軽にAIチャットボットを作成したい
■製品サイト
https://dify.ai/jp
■製品の動画
4. exaBase 生成AI
exaBase 生成AIは、自社専用のChatGPTが作成できるAIプラットフォームです。
■特徴
- 大企業でも安心できる高セキュリティ
- 複雑なプロンプト無しでの簡単運用ができる
- 利用している効果がひと目で分かる見える化機能が充実
■機能
- 高精度なRAGを搭載
- 最新モデルの「GPT-4o」を搭載
- データ処理は国内サーバーで実施
■こんな企業におすすめ
- 海外へのデータ流出が心配
- RAGの実用化を簡単に実施したい
- AIプラットフォーム活用の効果を自動で集計し、見える化して欲しい
■製品サイト
https://exawizards.com/exabase/gpt/
■製品の動画
5. NewtonX
NewtonXは、安全にChatGPTを利用するための法人向けサービスです。セキュリティやコンプライアンスに配慮し、機能面のリスクを回避した運用ができるようサポートしてくれます。
■特徴
- 導入から活用までをしっかりサポート
- 管理者側でChatGPTのアカウント管理が一括でできる
- 月に1回利用状況をレポート化してくれる
■機能
- 社内にあるデータを利用して回答を生成するナレッジコネクト機能
- 適切な回答が生成できるプロンプトテンプレート機能
- 出力結果をすぐに共有できるチャット共有機能
■こんな企業におすすめ
- AIツールを社員があまり使ってくれない
- 社内にIT人材が少ない
- AIツールをもっと効率よく使用したい
■製品サイト
https://www.seraku.co.jp/pr-site/newtonx/
■製品の動画
なし
導入・運用の注意点
企業向けAIプラットフォームの導入にはいくつものメリットがあります。しかし注意すべきポイントもあります。
導入時、運用時には以下の5つのポイントに気をつけましょう。
トータルコストの計算
AIプラットフォームの導入と、運用にはコストがかかります。しかしAIプラットフォームの運用が成功した際にもたらされる投資対効果(ROI)は非常に大きなものです。
製品の選定時には、導入コストだけでなく、運用コストと投資対効果(ROI)についても検討していきましょう。
メンテナンスの必要性
AIプラットフォームによっては、メンテナンスのために専門的なAIの知識や、コーディングスキルが必要になります。メンテナンスも含めてサポートしてもらえる製品は便利です。
システムの機能・サービスの特徴を確認
導入後に、「この機能が足りない」「AIを使うほどコスト増える」といった問題に気がつくことがあります。事前に、「導入した後でも、新たな機能が追加できるのか」、「自社が扱うデータ量はどれくらいか、そのコストの概算はいくらか」などを確認しておきましょう。
セキュリティ対策
AI時代には、社内に蓄積されているデータがこれまで以上に貴重なものとなります。同時に、データが外部に漏れるリスクも高まります。
そのためセキュリティ対策や、データプライバシーに対する対応が適切かどうかをチェックしましょう。
AIが学習するPDF内の個人情報を匿名化できたり、チャットボットが扱う個人情報を匿名化できたりする製品は安心して利用できます。
コンサルタントサービスの有無
AIプラットフォームは拡張性が高いため、多機能になりがちです。使いこなすためにはベンダーによるコンサルタントサービスが欠かせません。
導入時に、「自社の課題をAIでどのように解決していくのか」「どんなAIサービスを社内に作ったら良いのか」を一緒に考えてくれるベンダーを探してください。
GIDR.ai導入の流れ
- 問い合わせ
- カウンセリング・提案
(弊社によるカウンセリングが行われます。「企業が抱えている課題は何か」「AIで何が実現できるか」をじっくり話し合います) - 提案内容のご検討
- お申し込み
- 提供準備
- セットアップ
- 運用開始
- 運用サポート
(GIDR.aiは売り切り製品ではありません。常に最新のAI機能が搭載されていきます。そのため定期的にコンサルティングを行います。「最新AI機能をどのように活用できるか」「導入企業にぴったりのAPIやLLMは何か」を共に考えていきます)
最後に
企業向けAIプラットフォームには、PKSHAやDIFYをはじめさまざまな製品があります。「導入でつまずかない」「運用を定着させる」ためにも今回紹介した11の選び方を参考にしてください。
「どのツールを選んだらよいかわからない」「すでにAIツールを導入したが使いこなせていない」ときには、一度弊社にお気軽にご相談ください。課題の洗い出し、AIでできることと人間がすべきことのすみ分けを一緒にさせていただきます。
企業向けAIプラットフォームを活用することで、社員と顧客の双方が満足できるサービスやシステムを開発していきましょう。